ポケモンGOをマーケティングに活かす方法を考えてみた(前編)

ポケモンGOフィーバー

2016年7月22日(金)に以前から話題となり、アメリカなどで先行リリースされていた「ポケモンGO」が日本でもリリースされましたね。

このポケモンGOは、米国のNiantic社(Googleの社内スタートアップとして始まり、その後独立)が提供しているスマホ用アプリです。

実は任天堂は、Niantic社に出資をしているのですが、具体的な関係性はこちらのブログで詳しく解説されていましたので、興味のあるかたはご覧ください。

『ポケモンGO』の収益構造と任天堂の取り分について試算と解説をしてみました(外部サイト)
http://www.goodbyebluethursday.com/entry/PokemonGO_sales

 

スマホの1アプリがここまで注目され、実際に多くの人が遊び(初日のアプリダウンロード数なんと1000万以上とも言われています)、リアルに人の動きを大きく変えてしまうというのはただ事ではなく、様々なメディアで日々その過熱ぶりが紹介されています。

私もリリースと同時にアプリをインストールして、夜中にダイエットがてら近所を回ってみたり、仕事帰りに上野公園などに寄ってみました。

参考画像:現時点でのレベル(結構頑張りました)
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深夜といってもいい時間帯に普段は人気のない通りに多くの人が行き来し、平日夕方の比較的静かなはずの公園内がまるでお祭りのように人でにぎわっており、ちょっと異常ともいえる事態です。

参考画像:7/25の18時頃の上野公園の様子。集まっている人のほとんどがポケモン目的。
uenopark

 

ここまでの過熱ぶりはさすがに短期的なもので、ポケモンGOを長期にわたってプレイする人はごく一部に限られるとは思いますが、一つのゲームによって、ここまでの影響力が実社会で発揮されてしまうことには、空恐ろしいものすら感じてしまいます。

プレイヤーからすると、単にゲームを楽しむということ以外にも、普段足を伸ばさない場所に行ったり、近所の以外なスポットを発見したり、プラスな面も多いようです。

逆にまったく興味のない人などからは、歩きスマホの危険性や単純に通行の邪魔的であるなどの理由から、かなり否定的な意見なども出てきています。

今後ポケモンGOのようなARや位置情報などを活用したゲームやサービスなどがどんどん出てくるとは思いますので、興味のある人もそうでない人も、お互い感情的な意見をぶつけるのではなく、折り合いをつけて、社会としてのルールがうまく機能していくようになればいいなと思います。

今回の記事では、プレイヤーにもそうでない人にも多大な影響をもたらし、企業におけるマーケティングへの活用も期待されているポケモンGOをどうすれば活用できる可能性があるのか、そのためにはどんなことが必要なのかを前後編で考えてみます。

まずは前編では、現時点での事実や今後の予測などを中心にまとめてみました。

後編では、企業のマーケティング担当者や店舗の経営者・責任者がどのように活用できる可能性があるかをまとめる予定です。

後編もアップ済みです。
ポケモンGOをマーケティングに活かす方法を考えてみた(後編)

ポケモンGOがマーケティング担当者から注目されるわけ

ポケモンGOは、単にエンターテイメントとして注目されているだけではなく、企業のマーケティング担当者からも熱い視線が送られています。

7月22日のリリース時点では、日本においてポケモンGOと提携している企業は「日本マクドナルド」のみです。

しかし、ポケモンGOのベースとなっている「Ingress」という位置情報を使用したゲームでは、リリース直後は企業との提携なしで始まり、その後に、日本においては「ローソン」や「東京三菱UFJ銀行」と提携した経緯があることを考えると、今後マクドナルド以外の企業との提携が実現することは間違いないところでしょう。

では、Naintic社との提携でマクドナルドが得るものはなんなのでしょうか。

Naintic社との提携により、マクドナルドの店舗がポケモンGOのゲーム内の世界で、「ジム」や「ポケストップ」と呼ばれる重要な拠点の一つとして登録されています。

この拠点の元情報は「Ingress」で「ポータル」と呼ばれている大小さまざまなランドマークで、「Ingress」プレイヤーが地道に情報を収集して、「ポータル」として申請したものです。(ポケモンGOの世界では、ポータルよりもポケストップなどの場所が間引きされているようです)

そのため、Niantic社と提携しなくても、店舗にちょっと変わった看板や置物があったり、長年経営していて地元では有名などという場合は、偶然「ジム」や「ポケストップ」に指定されているということが発生します。

マクドナルドはお金を払って、自社店舗をすべて「ジム」や「ポケストップ」に指定する権利を購入したといってもよいと思います。(おそらくそれ以外の展開も水面下で進んでいるはずですが)

そのため、多くのポケモンGOプレイヤーが店舗周辺に集まるという状況が発生して、この提携がマクドナルドの業績にどの程度影響するのかを多くのビジネスマンが状況を見守っている状況です。
(リリースの直後の深夜にはマクドナルド周辺に人だかりができていました)

参考画像:リリース日の深夜23時頃の近所のマクドナルド周辺の様子
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ポケモンGOを活用したい担当者が押さえておくべき基礎知識

ちなみに補足的に説明すると、「ジム」や「ポケストップ」は以下のような位置づけのゲーム内拠点です。

 ・ジム:ゲーム内で他のプレイヤーとポケモン同士を対戦させたり、トレーニングできる場所

 ・ポケストップ:ポケモンをゲットするのに必要な「モンスターボール」やポケモンが孵化する「たまご」などのアイテムを取得できる場所

ゲームをプレイしていないとなんのこっちゃと思うかもしれません。

ポケモンを何らかのマーケティング手段として考える場合には、基礎知識として以下の内容を押さえておきましょう。

・「ジム」は使わなくてもゲームを楽しめる
※ライトなプレイヤーほど重要視していない(位置づけがわかっていない)様子が伺えます
※今後「ジム」でしか行えないなんらかの機能追加があれば、その位置づけは大きく変わる可能性あり
・「ポケストップ」はゲーム内で必ず立ち寄らなければいけない場所である
・ただし、「ポケストップ」は世界でも日本国内でもかなりの数が設置されており、特定の「ポケストップ」単体はそれほど重要な意味を持たない
・「ポケストップ」に人を集めるための手段としてポケモンが集まるためのアイテム「ルアーモジュール」がある

Google発のベンチャー企業Niantic社との提携なんて大きな話過ぎて、中堅・中小企業や小規模展開の飲食店には関係ないと考えるかもしれません。

しかし、さにあらず。

詳細は未発表ですが、「スポンサード・ロケーション」という「ジム」や「ポケストップ」(あるいは今後提供される新たな場所)を広告として使えるようになるサービスを予定しているという報道も海外でされているようです。

Niantic社が、検索連動広告という中小企業でも十分活用できる広告手段を提供したGoogle発の企業であることを考えても、実店舗への誘導が効果的であるメディアとしての可能性を考えても、小規模予算から利用できる広告メディアとしてサービスを発展させていくのではないかと考えられます。

ちなみに、ポケモンGOは「Ingress」の「ポータル」情報がもとになっている世界であるため、都内に比べてIngressプレイヤーが少なく、ランドマークも少ない地方などでは、ポケモンがほとんど出現せずまともにプレイできないという状況になっているようです。

今後何らかの対策がとられる可能性はありますが、地方の店舗や企業においては、現在の状況が続く限り、マーケティング目的での活用は難しいでしょう。

 

マクドナルドのポケモン活用の現在の状況

では、実際にポケモンGOをマーケティングにどのように活用できるのかをもう少し考えるために、現時点でのマクドナルドの活用状況を確認してみましょう。

前述の通り、マクドナルド周辺に人の流れおよび滞留が起きていることは事実のようですが、これだけでマクドナルドの業績が向上するのでしょうか。

今後何らかのキャンペーンが予定されているのでしょうが、リリースから本日(2016/7/27)までの間では、マクドナルドで直接的なキャンペーン(マックで商品を購入するとゲーム内のアイテムやポケモンをプレゼントするといった類のもの)は実施されていないようです。

一応リリース直後のハッピーセットのおもちゃがポケモン関連のものでしたが、普段から実施しているおまけのおもちゃと特段代り映えしないものでした。

もしかするとマクドナルドは初期の実験としてあえて大掛かりなことをせずに、単純に人の流れを作ってどの程度業績に影響がでるのかを図っているのかもしれません。

どの程度の影響があるのかは大変興味深いところですね。

ただ、実際に日曜日のお昼時にマクドナルドに子連れで行ってみたのですが、思ったほどの混雑もなくやや肩透かしをくらった感がありました。

実はこれはある意味当たり前の結果で、ゲーム内で「ジム」や「ポケストップ」を利用する場合は、かならずしも店舗を利用する必要はなく、店舗周辺に立ち寄れば十分なのです。

「ジム」を利用して、多くの人と対戦するといったことを実行するには、店舗周辺に長時間滞在する必要が出るために店舗を利用する可能性もあがりますが、そもそも「ジム」が一部のプレイヤーにしか利用されていないこともあり、店舗周辺には長居する状況がそれほど発生していないようです。

そのため、多くの人が一時的に立ち寄ってすぐに去っている様子でした。

人の流れということで考えると、無駄な人だかりができたりして、ポケモンプレイヤー以外が近づかなくなるなどのマイナスの影響が出ていることも可能性としては考えられます。

 

ポケモンプレイヤーの目的を考えてみる

ここまでマクドナルドの状況(私の住んでいる地域の店舗の話ですが)をまとめてみましたが、プレイヤーがどんな行動をとるかは、ゲーム内で何を目的とするかによって変わってきます。

現時点で多くのプレイヤーが目標としているのは、「ポケモンの収集」=「多くの種類ポケモンをゲットすること」といってもよいのではないかと思います。

参考画像:現時点でのポケモン捕獲数69匹(それほど多くはないけど、ライトプレイヤーよりは多いくらいでしょうか)
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実際には、ポケモンをコンプリートするためには、同じ種類のポケモンをたくさん集めて進化させたり、プレイヤー自身のレベルを高めて、より有用なアイテムを「ポケストップ」から得られるようになる必要がありますが、これはなかなかに地道な作業です。

しかし、大多数を占めるライトなプレイヤーが地道にレベルを上げるような行動を継続するとは思えません。

そうすると、一部の熱心なプレイヤーを除き、できれば直接新たな種類のポケモンを捕獲するための行動をとりたいと考えるのが自然ではないでしょうか。

「ポケモン」には、捕獲しやすいものと、なかなか捕獲できないものが何段階かに分かれて存在します。

「ポケモン」の出現はランダムですが、プレイしてみた限りでは、出現率の低めのレアなポケモンは特定の場所(出現率が低ければ低いほど見つかる場所が少ないと考えられる)でしか見つからないことが多いようです。

例えば、ポケモンをプレイしたことはなくても多くの人が知っている「ピカチュウ」は簡単には捕獲できないレベルのポケモンですが、東京の新宿御苑で大量に出現するらしく、「ピカチュウの巣」と呼ばれ、大変な人だかりになっています。
(2016/7/31追記:特定のポケモンが大量に見つかる「巣」は定期的(1週間ごと?)に移動することが見えてきました)

上記からポケモンGOプレイヤーの行動を考えてみると、

 ・大多数のプレイヤーは、時間をかけずに新たな種類のポケモンを簡単に捕獲できる場所を探して無理のない範囲で移動する
・「普通のポケモン」はほどんとの場所で普通に見つかるが、「レアなポケモン」は特定の場所でしか見つからない(普通の場所でも見つかる可能性はあるが確率が大変低い)

 ・ゆえに、多くのプレイヤーは、プレイ初期段階を除くと普通の場所に長時間滞在することは少ない

ということになりそうです。

 

店舗の「ジム化」や「ポケストップ化」だけでは効果は限定的?

マクドナルドの例でも、プレイヤーの行動原理などを考えても、店舗の「ジム化」や「ポケストップ化」をしたり、「ルアーモジュール」などを使って、ポケモンがつかまりやすい状況を作ったとしても、お客さんがたくさん集まってきて、自然に店舗に新規顧客が流れてくるということは少し考えづらいようです。
※「ルアーモジュール」は「ポケストップ」に設置することで、30分間近辺にポケモンが集まりやすくなるアイテム。似たアイテム「お香」と違い、使用した人以外の誰でもその恩恵にあずかることができる。有料もしくはレベルアップなどによって取得可能。

ではどうすればよいかといえば、単に人を集める以上のやや積極的なアクションを取らなければ意味がないということになります。

後編では具体的にどんなアクションが考えられるかの案をまとめる予定です。
(7/31に後編公開しました)

ではでは。

この記事を書いた人

岡安裕一